『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(1)
FindUメンバーが中高時代に読んだ本/読んでおきたかった本をオススメする「BooksU」。第6回の今回はあんどうを東大日本史学科へといざなった、歴史学の名著をご紹介。そこには、歴史学にとどまらず異なる考え方がぶつかる世界を生き抜くにあたってのヒントが詰まっているのです。
歴史「学」とはなにか
皆さんは「温故知新」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ご存知のように「昔のことを研究して、そこから新しい知識や道理を見つけ出すこと」(日本国語大辞典)という意味の言葉です。歴史の先生が「なんで歴史を勉強するの?」という問いに答えるのによく使う、大変便利な言葉だと思います。
しかしこの言葉は、中高で歴史教育を受けた/受けている人にとって直感に反するのではないでしょうか。
学校の歴史では教科書に載っている事件や人物を覚えていく作業が中心になりがちであり、「歴史=暗記科目」のような印象を与えます。「こんな暗記に何か意味があるの?」という疑問を抱いた人も多いでしょうし、歴史が嫌いになったという人も多いことでしょう。
本書はまさにこの疑問に答えることから出発します。
著者は東大文学部で教鞭を執る加藤陽子先生。実際に東大で歴史「学」を行っている先生が、歴史的なものの見方を実演してくれます(序章)。
さらに、この本は中高生向けの講義をもとに文字起こしするような形で本にしたものなので、扱う対象の難解さに反して読みやすくわかりやすい文章で書かれています。
学校の歴史が嫌いな人(もちろん好きな人も)、暗記ばっかりの教科書とはまた違った、歴史「学」の世界を体験してみませんか。

偶然の効用
ここで思い出話を一つ。僕がこの本と出会ったのは高校2年生のときでした。
親と揉めて家を出たはいいけれど行くあてがない…。
諦めた僕はブックオフに行って面白そうなタイトルの本を数冊手にしました。そのうちの一冊がこの本だったというわけです。
結局僕はそのあと24時間営業のマックに行って、一晩中この本を読んでいました。
当時「僕は大学で日本史をやるんだろうなー」くらいには思っていましたが、この本を読んで自分には日本史以外の進路はないと確信させられました。
本の紹介とはややズレますが、偶然の持つ力を実感したのもそのときです。
高校時代に読んだ本の数が10冊に満たない僕がたまたまこの本を手に取り、そして今では先生の講義や演習にも参加しているというのは偶然のなせる技だと思います。友人であれ恋人であれ本であれ、ちょっとした出会いが人生を変えてしまうということは、貴重な高校生活の時間を過ごす上で頭の片隅に入れておいて損はないと思います。
実際の本の中身、そこから考えられることについてはまた明日。お楽しみに〜!
作品紹介
加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2009年) 文庫版は(新潮社、2016年)