『蜜蜂と遠雷』

「BooksU」映画化シリーズ第1弾。

今までの本とは違って、この本は高校生の頃に読んだ、というわけではありません。単行本になったときにはもう私は大学生になってたし。

でも、小説の王道、というべき傑作小説です。ぜひ高校生にも読んでほしい。そんな一冊。

この本自体が一つの協奏曲

この本はあるピアノコンクールに出場する4人のコンテスタントを中心に、出自/人間関係も経験も考え方も異なる音楽の天才たちが音楽を通じて自身をみつめなおしていく物語です。

栄伝亜夜、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、風間塵、高島明石。

いちおうこの4人が中心ということにはなっていますけど、そして確かに彼らが中心ではあるんですけど、彼らとて一つの音符です。主役は音楽それ自体、世界に溢れている音そのものなのだと思います。

音が文字になる、とはこういうことか。個性的な演奏をそれぞれに書き分けるとはこういうことか。

まぁ発見が止まりません。感動にはこれほどたくさんの種類があったのか、と思わされます。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』2016年、幻冬舎
(今はもう文庫版も出ています)

本の章分けをみてみると、エントリーにはじまり、第一次予選、第二次予選、第三次予選、本選と続きます。

そうです、この本の各章がまさに楽章です。間違いないです。本の中の世界をこの本自体が体現しているんです。本選の結果はこの際どうでもいいです。美しい音の前では曲の終わりの音符がなにであったかがどうでもいいように。文字が自身に迫ってきて圧倒して頭から離れない、そんなどうしようもない本です。

そうです、どうしようもないんです。魅力の魅とは魑魅魍魎の魅です。本の中の一人一人の登場人物も音楽的快感や宿命やなんのそのに取り憑かれているんです。理屈じゃない世界、ってまさにこういうことなんだとつくづく思わされます。

映画化された!

はい。映画化されました。みてきました。なんならみたあとに帰りの電車で一読してこれ書いてるってくらいです。映画もよいです。もう一回、二回映画館いってもよいくらいです。

いや、いいたいことはありますもちろん。でも、そういうのを全部さし置いてやっぱりいいなってなります。そうです、あれこれしたあとの生に対しての全面肯定です。何もかもを。

本屋大賞と直木賞のW受賞だから、とかではなくて、これは恩田陸の代表作にして、後世に残る小説です。

いいだすとキリないので惚れるフレーズ、ラストシーンの次に頭に残った文章を書き留めて終わります。読みましょう。映画みましょう。まじでいいから。惚れるから。

…人間という存在にほんの少し、地上の重力のくびきを逃れるための何かを付加するとしたら。
それは「音楽する」ということが最もふさわしいのではないか。目に見えず、現れてはその片端から消えていく音楽。その行為に情熱を傾け、人生を捧げ、強く情動を揺すぶられることこそ、人間に付加された、他の生き物とを隔てる、いわばちょっとした魔法のようなオプション機能なのではないか。

477-478頁 本選

作品紹介

恩田陸『蜜蜂と遠雷』2016年、幻冬舎

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