『勝手にふるえてろ』

「BooksU」映画化シリーズ第3弾。

妄想だだ漏れオタク女子のひとり恋愛ドタバタ記。主人公の暴走にページをめくる手が止まらない中編小説。

2017年に公開された映画版もよかったです。松岡茉優が映画初主演(めちゃくちゃいい演技してます)、その他「キミスイ」でブレイクしたての頃の北村匠海とかが出演。大きい映画館ではそんなに上映されていなかったかもしれませんが、結構映画ファンの間で熱かった作品です。

妄想爆発女子、現実にぶちあたる!

「私には彼氏が二人いて、どうせこんな状況は長く続かないから存分に楽しむつもりだった。」

12頁

26才経理課女子、江頭良香。中学2年生のとき、一度だけ同じクラスになった同級生(イチ)に片思いしてからその子のことをずっと脳内再生していた彼女は、まるで自分は好きにはなれない営業課の同期(ニ)に告白されています。2人の彼氏がいるという妄想の中で楽しく生きてきた「私」は、人と話したり自分から何かをしたりするということがとても苦手。恋愛経験で周りに引け目を感じていたり。

 

でも、そんな彼女ですが、酔っ払ってヒーターで布団を燃やして死にかけたことをきっかけに、中学校のときだって3回しか話をしたことのなかったイチともう一度だけ話をしようと東奔西走することになるのです。

さらに、実際にイチと話をしたときに気がついたあることをきっかけに、ニとの関係にも大きな変化が。

私の暴走に近い行動を通じて、私やイチや二や会社の同僚たちと私との関係が大きく変わっていく中で、私はある結論に達することになるのですー。

私もイチもニも。

基本的に私のモノローグで語られるこの物語、私が少し変わったひとに見られがちであることは確かなのですが、私の目線を通してよくよくみてみると、イチもニもなかなかクセの強い人たちなんだなぁと思わされます。「勝手にふるえてろ」という題名だって、誰が何に対してふるえているようにみえるのか。

でも、周りと比べて強いコンプレックスがあったり、自意識過剰になってしまったり、それを押し殺そうと無理に言葉を重ねたり、たぶんそれは私たちも同じこと。

恋愛や恋愛に限らず周りから感じる視線や周りより自分が劣っているように感じてしまうことに悩んでいたり、その悩みを押し隠すために明るく振舞ったりやたら口達者になったり。

 

みんな不器用だけど、でも不器用どうしが乱暴に触れ合っていく中で、そこにはなにかが生まれていること。

「こういうとこ、自分にもあるよな」とか「こういうやつ、周りにいたわ」とか、そういうことを考えながら主人公たちに好意的に読んでいくと、最後にはなにか勇気がもらえます。

作品紹介

綿矢りさ『勝手にふるえてろ』2012年、文春文庫

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