東大法学部特集~特別編「法学とは何か」~ <後編>

みなさん、こんにちは。東大法学部4年のシュウです。

前回は、私たちFindUの公式LINEにいただいた「法学部では何を学ぶのか」という質問をうけて、法学部で学ぶ「法学」について紹介しようということになりました!

たしか事例が最後に挙げられていましたね。今回はいよいよその後編です。

2.法学とは

法学とは法に関わる学問すべてを指します。ここまで説明した中で薄々わかってくださった方もいるかもしれませんが、法学とは条文を暗記するだけの学問ではありません。

ここから先は少々細かいですが、法学部に関心がある人にはぜひ正確に理解してほしいところなので、どうかお付き合いください。

 

法学には一般的な分類として、「実定法学」「基礎法学」の2つがあります。

① 実定法学

ここでは主に、人間が定めた法律そのものを学びます。過去の裁判所の判断や、その法律が作られた背景などをもとに、条文を分析していきます。

たとえば憲法や民法、商法、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法のいわゆる六法や、行政法や租税法などなど、条文の形をした法律はたくさんあります。現在日本にはおよそ2000もの法律があります。

もちろん大学では全ての法律を学ぶことはできないので、多数の法律を解釈する上で不可欠な重要な法律を中心に学ぶと同時に、他のマイナーな法律を自分で見て解釈・応用できるような法的思考力(リーガルマインド)を養います。

○ 法律の解釈とは

さてみなさん、よく考えてみてください。様々な職業、生活スタイルをもつ1億人以上もの人が暮らすこの日本はものすごい複雑な社会です。

法律はこの超複雑な社会のルールを、「言葉」だけで表現しているのです。これってすごくないですか?

 

このような様々な事情を抱えて行動する人それぞれに当てはまるように、言葉に含みを持たせて法律は作られているのです。だから法律用語はわかりにくいと言われるのです。

たとえば、刑法199条の殺人罪に関する条文を見てください。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

さて、この条文の解釈を体験してもらうために、こんな例を用意しました。

事例

AさんはBさんとは幼なじみであり、物心ついたときから一緒に遊び、小学校から大学までずっと同じ学校に通っていました。Aさんは30歳で同級生のCさんと結婚しましたが、実はBさんもCさんのことが好きでいつか結婚したいと思っていました。そんなBさんはCさんを取られてしまったのが本当に悔しくて、次第にAさんのことが許せなくなっていきました。そんなある日、AさんとBさんは飲み会の席でCさんを巡り口論となり、Bさんは痛めつけようと思ってAさんの足を思いっきり蹴飛ばしました。床が濡れていたため、Aさんは勢いよく転んで頭を強く打ち、3日後に亡くなりました。

このときBさんは何の罪に問われるでしょうか。なおBさんは「足を蹴っただけでまさか死ぬとは思ってなかった」「別に殺すつもりはなかった」と供述しています。

このとき、BさんはAさんを死なせているんだから殺人罪だ!とは簡単には言えません。

ここで先ほどの刑法199条の条文をもう一度眺めてみましょう。「人を殺した者は」とありますが、これはどういう状況を表しているのでしょうか。

たとえば最初から殺すつもりで拳銃を発砲した場合と、殺すつもりはなく単に怪我をさせてやろうくらいの気持ちで蹴ったら、当たり所が悪くて死なせてしまった場合とでは全く状況は違います。

すなわち「人を殺す」と、「人を死なせてしまう」とでは意味が全く違うのです。両者の差は「人を殺す気があったのかどうか」(法律用語では“殺人の故意の有無”と言います)にあります。

今回の事例では、Bさんは確かにAさんのことを恨んではいましたが、別に殺したいとまでは思っていなかったので、殺人の故意が否定されて殺人罪は成立しません。

代わりに刑法205条の傷害致死罪が成立します。

身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

さて、いかがでしたか。このように法律の言葉としっかり向き合い、正確に理解していくのが実定法学なのです。

もちろん実際は、過去の裁判所の判断や法律が作られた背景なども踏まえて、さらに深く法律の解釈を行っています。

② 基礎法学

基礎法学はいまいちピンとこない人もいるかもしれません。

いくつか例を挙げると、法とは何かを徹底的に考える「法哲学」、法の発達の歴史を扱う「法制史」、英米法やフランス法など、各国法の比較に重点を置く「比較法学」、法にまつわる社会現象について扱う「法社会学」(たとえばなぜ日本ではトラブルがあるとすぐに裁判所に訴えるということにならないのか)などがあります。

社会の仕組みやルールを分析するのがメインの実定法学に対して、基礎法学では法律の理論的要素を扱います。

「法学部ではどのようなことを学ぶのですか」に質問に対して、ここまで長々と説明してきました。

ちょっと難しい部分があったかもしれませんが、これからも法学部や法律に関する情報を発信していくので、正確な実態をつかむきっかけに少しでもなってくれればと思います!

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